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06.09.22:02

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  • 06/09/22:02

02.12.23:30

5

ビニール袋にラストの1パックを包んだのを小脇に抱えて、ガレージのシャッターを下ろす。
借りた場所はビルの1階のガレージ部分だ。電源もあり、入り口脇には水道も設けてあって、使い終えたバケツや器具を洗い流すことも出来て有り難かった。

シャッターの最後を靴裏で踏んで閉め、預かっている鍵を掛ける。
「さて、と・・・」
コートのポケットから携帯を取り出し開いた。時間は夜の22時過ぎだ。着信やメールはない。
酔っ払い、呼び込み、ホームレス・・・この寒いのにあり得ない位太ももを出した女子高生たち。あらゆるトーンの喧騒の中を歩いて東に向かう。俺の部屋がある場所だ。
一日立ちっぱなしてたこ焼きを焼き続け、流石に草臥(くたび)れた。明日は今日よりも遅く店を開き、遅くまで営業しよう。
(とりあえず、今日は寝るか)
夜食と味見を兼ねて取っておいたたこ焼きを抱え、歩く。
この通りは「七福通り」だ。飲食店や風俗店が軒を連ね、高級車と商用車が競うように路上駐車している。道幅は広く、辺り構わず固まって騒ぐ若い酔っ払いの集団や、20センチヒールで駆け寄ってこようとするキャバの嬢ちゃんたちを避けて進むスペースは充分ある。
寒風に乗って流れてくるのは焼肉の煙だ。今日もぎょうさん焼いとるな。店の前には再開祝の豪奢な花輪がいくつも並んでいて華やかだ。
「ありがとうございましたー」
その店から、店員に見送られて出てきた赤い上着の男とばったり出くわした。足を止めて久しぶりの顔を見る。
「あらっ。ええっと・・・、・・・郷田さん?」
なよなよした上体のリアクションで声を掛けてきたこの男が「社長」。天下一通りという場所で金貸しをやっている、秋山という男だ。
「よお、社長。久しぶりやの。どうや景気は」
決して太っているわけではない。この男もまた闘う術を持っている。テコンドーだかカポエイラだか知らないが、凄まじい足技で相手を蹴り倒すのが得意だ。だが、仕立ては悪くない服をろくに手入れしておらず、無精髭も髪も伸び放題な風貌がどうにもだらしなく、ひょっとしてまたホームレスに戻っているのかと思ってしまう。
・・・が、その手に提げた紙袋には高級焼肉店自慢の焼肉弁当の折が、少なくとも3つは積んであるのが見えた。
「それなんですよ、もう、ほら。復興特需って言うんですかね?いろんなところから借金の申し込みが相次いじゃって。おかげで俺も花ちゃんも・・・、って、あぁ、うちの女子事務員なんですけどね。すっかり残業漬けなんですよ。今夜も遅いんで花ちゃんキレちゃって、慌てて鎮静剤、買いに来たとこなんです。」
鎮静剤、と言いながら焼肉弁当の紙包みを持ち上げて見せてきた。思わず片頬が緩む。
「ほうか。それはお疲れさんやな。街のために頑張りや。」
「ええ、頑張ります。郷田さんは今は?」
「俺は今日から、またたこ焼き屋、始めたところや。今はその帰りや」
ほう、と、秋山の表情が明るく変わる。
「ホントですか!それはおめでとうございます。場所はどの辺りで?」
「この通りの・・・ドン突きやな。児童公園の前辺りや」
「わかりました~。桐生さんからも、郷田さんのたこ焼きは旨い、って聞いてたんですよ。是非近いうちに寄らせてください。」
「あんま期待すんなや。ま、来たらサービスしたるわ」

七福通りを俺は東へ、秋山は西へと歩き別れて。歩きながら、二人で食うはずの焼肉弁当が3つはあったのは何故なのかをちらと考えた。
その時、コートのポケットの中で携帯が震えた。開いてみれば、桐生だ。
「なんや」
「開店お疲れさん。どうだった」
聞こえる声の後ろで、盛大に全自動卓がフル回転してるのが分かる。舌打ちした。
「また麻雀かいな。好っきやなぁ」
「違うんだ。今夜は成り行きでな。長丁場になりそうなんだ。お前のたこ焼き食いたかったんだが、明日はやってるか」
「トカゲはおったんか、トカゲは」
「トカゲ?・・・ああ、イグアナな。無事飼い主に帰せた。」
「明日は昼からや。来れたら来ぃや」
携帯を仕舞う。まったく、何やっとんのや、あのオッサン。
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